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腰椎椎間板ヘルニアとは

腰椎椎間板ヘルニアについて

プロ編 Vol.2

腰椎ヘルニア OA 側面 X-P

腰椎椎間板ヘルニア

若年者の腰椎椎間板ヘルニア

[概念と病態]

輪状軟骨が残っている若年者の腰椎椎間板ヘルニア発現率はわが国では全体の数%以上で、欧米に比して高いという報告がある。
若年型の特徴としては

(1)神経脱落症状は軽度か早期に消失する

(2)  ラセーグ徴候などが著明にでる

(3) レベルは L/S1が 40~50%を占め比較的多い

(4) スポーツなどによる外傷が契機になることが多く、ヘルニアの大きさの割に痛みは軽い

(5) 腱反射の低下は起こるが成人のように消失することは少なく病理像として 椎間板組織の変性はほとんどなく、終板の損傷、断裂を伴って発生することが多い。 線維輪の中に終板軟骨が混じった protrusion type が大部分で、 後縦靭帯を破って硬膜外腔に遊離してくることはほとんどない

(6) 他のレベルに終板の不整や シュモール軟骨終節を有しているものが少なくなく, Scheuermann 病との関係も示唆される。

(7)  発育性狭窄を伴うものが少なくなく,上関節突起基部内縁の外側陥凹に注意する, 若年者の椎間板ヘルニアは遺伝性が高いことが知られている, 16, 7歳を過ぎると脱出型を含み成人型に近いものが増加する。

[発生年齢] 

最低10歳より生じ, 女子が早く、 加齢とともに増加するが, 終板損傷型の好発年齢は女子で12~14歳, 男子で14~16歳である。 それ以後のものは成人型に準じるが, 一応20歳未満を若年型と称してい[問診で聞くべきこと] 次の点に注意する。

①外傷の有無、機転, 外力の方向と大きさ, スポーツの種類。

②痛みの始まった部位, 放散方向。 増悪因子, 緩解因子。 下肢知覚鈍麻の部位, しびれ感 dysesthesia の有無と部位, 筋力低下の有無と程度‐爪先歩行(S,神経根 -下腿三頭筋), かかと歩行(Ls 神経根, 前整骨筋),膝伸暴力 (La, Ls-大腿四頭筋),など。
③排尿障害の有無。

[診断のポイント ]

①疼痛部位は下部腰椎または殿部から下肢にかけてあり, straight leg raising test が強陽性。

②知覚障害,筋力低下の部位は神経根支配領域と一致する。 ほとんどないことあり。

③ MRIとミエログラフィー画像上に認めるヘルニアと神経根症状とは一致する。

④ 選択的神経根造影における疼痛再現性とブロック効果は自覚症状と一致する。

⑤鑑別診断上の他疾患を除外できる。 例えば,発熱や全身倦怠、 また、血液生化学的検査所見等に異常はなく、症状は self-limiting な疾患である。重要なことはそれがヘルニアであるか否か、どの部位に,どんな状態で存在し, 痛みと神経症状の責任部位として正しいか否かを診断することである。

[鑑別診断]

① 脊椎分離症、すべり症

② 脊椎および馬尾の腫瘍

③脊椎と周辺組織の原発性, 続発性腫瘍。 これは特に注意する必要がある。
④脊椎炎等の炎症

⑤ 心因性疼痛,麻痺

治療方針

① 椎間板ヘルニアは, surgical emergency としての排尿障害など馬尾神経麻痺を来さない限り保存的治療を行うのが原則である。

② 初めから慢性的な神経痛として訴える場合, 重労働や脊椎に負荷のかかる激しいスポーツは禁じるが,通学や軽作業は許可し経過を観察する。

③ヘルニアの自然治癒能力は高く, 軽作業でも症状は軽快するものが少なくない。

保存療法

急性期

次のような保存的治療を加える。

①腰椎の安静 罹患椎間板に負担がかかり, ヘルニアを後方へ押しだしてしまうような荷重をさける。

② 姿勢について, 急性期は臥床時最も楽な姿勢 側臥位で患側を上にし前屈した姿勢,即ち, 椎間孔が拡大するような姿勢をとらせる。

③薬物: 鎮痛消炎剤は痛みを軽減するだけでなく、筋の反射的なスパズムによる椎間板, 椎間孔の圧縮と狭小化による神経の圧迫と機械的刺激を避ける。
④ 疼痛が強い場合, 症例によって選択的神経根ブロックを行う。 これは障害神経根のレベル診断と部位の診断に役立つ。

⑤ 腰痛バンド:軟性のものが適当。 仰臥位で腰仙部から下腹部にしっかり締める。 腹筋を支え腹圧がかか
ることにより骨盤への負荷の分散をはかり, 椎間板へ
のそれを軽減する。
⑥牽引: 急性期は一般にかえって痛みを増加させる
ことがあるので行わない。

慢性期

① 2~3週間程度体育は休ませるが, 急性期を過ぎれば通学させ様子を見る。

②疼痛が特に強い場合のみ鎮痛剤を使用するが,ほとんど不要。 入浴などの温熱は有効。

③中腰姿勢や、ことに前屈姿勢での負荷を避ける。

④ 腰痛バンドによる脊椎負荷の軽減。

⑤ 腰痛体操。

⑥ 定期的観察,神経脱落症状に注意する。 腫瘍や炎症を見逃さないようにする。

手術療法

■ 手術適応

①排尿障害や会陰部のしびれ, ほかに馬尾症状がある場合は絶対的適応。

②疼痛と腰部筋の痙直による歩行障害など、日常生活動作上の障害が強く, SLRTも30~40度と高度で、3~4週間の入院臥床安静, 保存的治療ではほとんど無効か改善がわずかな場合は相対的適応。

③慢性期では, 2~3ヵ月の活動制限をしても痛みはほとんど軽減せず, 下肢伸展挙上テストが40~60度あり,知覚障害,筋力低下のいずれかまたは両方が改善しないものが挙げられる。

④ 絶対条件として上記の症状と一致するヘルニアの画像所見があること。即ち, 硬膜管および神経根の圧排が著明、あるいは神経根の直下にあるなどである。

②2 手術計画と方法

若年者では後縦靭帯を破らず, protrusion 型が多いこと、スポーツ復帰等の関係で, 近年では経皮的ヘルニア摘出術やキモパパイン注入療法による良好な成功率の報告が増加している。 手術の方法については成人の場合とほとんど同じである (成人のヘルニアの項参照)。 しかし, 線維輪とともに軟骨終板の部分断裂と転位を伴って腫瘤が硬いものでは時にノミを使用し,これを含めて切除する。 若年者でも上関節突起基部内側の外側陥凹が狭い場合はここも除圧する。 固定術追加の必要例はほとんどない。

後療法


術後は通常2~3日後より起立歩行を開始する。腰痛バンドを6~8週間使用する。 活動性が高く, スポーツ活動を早く希望する子供が多いが, 軟骨終板の癒合と成熟の程度を考慮し,軽いジョギングより始め,負荷をかけない姿勢での伸筋屈筋訓練を行ってから徐々に復帰させることが必要である。

 

 

高齢者の椎間板ヘルニア

[概念と頻度]

高齢者の定義は領域により異なり一定しないが, 椎間板ヘルニアは周知のごとく青壮年に圧倒的に多く,高齢者では稀であり, 変形性脊椎症に伴う脊柱管狭窄が合併することが多いこともあって,とかく椎間板ヘルニアの存在に注意が払われない傾向がある。 過去20年間の自験例でみても, 20代30代が約60%を占め, 60代以後は 1.9%にすぎない。 文献的に
も 0.7~5.8%と頻度が低い。 そのなかでも60代が9割を占めている。 罹患椎間は青壮年と同様にL4~5間が最も多く,次いでL5~S1 椎間となるが, L3~4椎間の頻度が青壮年に比してやや高い傾向にある。 高齢者におけるL3~4椎間板ヘルニアの多くは下位2椎間に狭小化と可動域制限を認め, これに伴うL3~4 椎間の代償性負荷増大に基づくものと推測される。

[ヘルニアの病理] 

ヘルニアをタイプ別でみると, 10代では 突出 が多くを占め, 20代から30代にかけ
ての青壮年期に 押し出し型の頻度が増加し, 40代から50代の中年になると 押し出し型が多くを占めるようになり, 60代以後には 隔離型 が多くなる。また, ヘルニア塊は若年者では髄核組織が主であるが,高齢者では変性断裂した線維輪が終板を伴って脱出している例がほとんどである。 なお,ここにいう高齢者の椎間板ヘルニアには, 脊柱管狭窄症の際にみられることの多い後方線維輪全体としての後方膨隆は含めていない。

[臨床症状]

一般に高齢者のヘルニアでは下肢症状の強い症例が青壮年のヘルニアより多く, また50代までに腰痛・下肢痛の既往症があった上に高齢に至って再燃して受診する例が多い。 したがって, 青壮年のヘルニアによくみられるように、 何らかの外力が働いて急性腰痛をもって発症するものは少なく, 大した誘因もなく発症してくる例が多い。
SLRのような 症状は青壮年に比して陽性例の頻度が低く, これは高齢者にみられる神経根の弛みと関連するものと思われる。 一方,筋力低下, 反射消失, 知覚障害といった神経脱落症状は高率に認められ, 脊髄造影で完全停止像を呈するような大きなヘルニアや脊柱管狭窄との合併例では,排尿障害なども伴うことがしばしばである。

[検査所見 ]

単純X線像上は多椎間にわたって変性所見が認められ、必ずしも責任椎間の変化が最大ではない。むしろ隣接下位あるいは上位椎間の骨性変化の方が目立つことが多い。脊髄造影は必ずしも必要とせず, 現在ではむしろMRIが優先して調べられる。 しかし脊柱管狭窄の併存例にあっては,脊髄造影による動態撮影が病態をよくとらえる上で有効である。 純粋なヘルニア例では,前
方より主として片側性に椎間板の後方突出がみられ,脊柱管狭窄症における後屈で増強する後方あるいは後側方よりの圧迫とは区別される。なお, 脊柱管狭窄に明らかな椎間板ヘルニアが併発している例も稀ではない。変形性脊椎症や脊柱管狭窄症の併存により多椎間神経根圧迫の認められる場合には, 臨床症状と突き合わせ、時には電気生理学的診断が障害神経根の同定のために必要となる。

[鑑別診断]

変形性脊椎症や脊柱管狭窄症のほかに,馬尾神経腫瘍や脊椎腫瘍などが挙げられる。外来において, 臨床症状と単純X線写真のみを中心に診断していた時代には、入院後に脊髄造影を行ってはじめて馬尾神経腫瘍が見つかったり,仙骨腫瘍を見落としたりする例が散見されたが, MRIの出現以来,このような誤診の恐れはほとんどなくなった。むしろ,無症状の間に脊椎や神経の腫瘍がMRIによって見つかることが増えている。

|治療方針|


① 青壮年のヘルニアと同様に, 消炎鎮痛剤を中心とした投薬, 持続骨盤牽引を中心とした安静療法, ステロイド剤と局麻剤を用いた硬膜外ブロックや神経根ブロックなどの保存療法が効果を示す。
②激痛を訴えたり, 神経脱落症状を認める例が多く,このような場合には手術療法の適応となる。
③ なお, 高齢者であることもあって,各種の成人病を合併している例も多く, 手術に際しては十分な術前検索を行い,術中および術後の注意深い管理が要求される。

手術療法

① ヘルニア腫瘤を摘出するだけのいわゆるLove法が主として行われる。 最近では, 腰部の筋肉をほとんど損傷することなくヘルニア腫瘤の摘出を行いうる鏡視下手術も良い方法と考える。
② 脊髄造影でいわゆる砂時計様狭窄像を呈して, ヘルニアによる前方からの硬膜圧迫だけでなく,後方あるいは後外側からの骨性圧迫の関与が認められるよう脊柱管狭窄症併存例では,両側を展開して外側陥凹横のくぼみの除圧を追加する方がよい。
③すべりを伴うような不安定性の著明な例は別として 固定術を必要とする例はほとんどなく, 術後も早期よりの体動と離床が可能である。また深部静脈血栓症を予防する意味で,術中術後の安静期間を通して両下肢に特殊な予防用ストッキングか弾力包帯を巻き,術後は早期より下肢の自動運動を行わせる。

[術後成績]

術前に激痛を訴えたり, 神経脱落症状の強い症例でも,腰痛・下肢痛といった自覚症状は非常によく改善し、患者の満足度は高い。 しかし, 神経脱落症状は術後に回復は示すものの,残存する例が多い。 それにも拘らず患者の満足度が高いのは,疼痛や不快なしびれ感などが取れるために, 日常生活が著しく改善することによると思われる。

 

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